お花見スポットとして知られ、シーズンには人でごった返す「蹴上インクライン」。
お花見は日本人の誰もが好きなものですが、観光地のように人がたくさんいてはゆっくり楽しめませんよね。
今回ご紹介する「蹴上(けあげ)インクライン」は、お花見シーズンだけでなく、初夏や新緑の季節にもおすすめなお散歩スポットです。
「蹴上インクライン」って何?

上から下に向かって進むのがおすすめ。ちなみに両側にある木は桜。
ほとんどの方は「蹴上(けあげ)」も「インクライン」もなんのこっちゃというところではないでしょうか。元々住んでいる人や詳しい人でもなければ分かりっこないですよね。
蹴上(けあげ)は地名、インクラインはざっくりいうと斜めに走る鉄道のことをいい、傾斜鉄道と訳されます。
のちほど写真で紹介しますが、ここは琵琶湖から運搬目的で切り開いた疎水の中間地点で、そこから陸へは疎水から来た船ごと線路にのっけて傾斜を上がっていったという場所です。
ちなみに蹴上という地名は、源義経由来。義経と、平家が乗っていた馬の一団がすれ違うとき一団のひとりのミスで馬が泥水を蹴り上げたという話からだとか。
今回は蹴上インクラインを、上から下へくだっていく流れで紹介します。
「蹴上インクライン」へのアクセス

蹴上インクラインの復元です。
蹴上インクラインへは、地下鉄東西線の蹴上駅の1番出口から徒歩数分。駅を出るとキツめの坂になっています。出口から左にすすみ、坂を上がっていくと左手側に石段がありますので、それをあがるとすぐです。
上からも下からも蹴上インクラインへは行けますが、上からの方がゆったりと楽しめるでしょう。
画像は、スタート地点(最上部)にあるインクラインの復元。線路に舟が載ってるなんて不思議な感じですね。
坂の上には広場も

蹴上インクラインのスタート地点にある広場
蹴上インクラインの上の方には画像のような広場があります。蹴上インクラインは観光地というよりは遺構といった趣きで、きちんと整備されているわけではありません。
ゆったりとできるスペースはこの広場ぐらいなので、お弁当を食べるなどは広場のベンチを利用しましょう。
ちなみに、蹴上インクラインの近くにはコンビニやスーパーはないので、飲み物が欲しい場合は蹴上駅の自販機で調達しておくのがおすすめです。トイレもないので、駅で済ませておくとよいですよ。
「蹴上インクライン」は新緑の季節もフォトジェニック

線路の始まり
上から見るとかなりの傾斜であることが分かります。高低差は約36メートル。砂利道を歩くことになるので、歩きやすい靴で来るのがよいでしょう。
線路の長さは約580メートルで、傾斜鉄道としては世界最長らしいですよ。
線路の両脇に生い茂る木々は桜の木。とても魅力的ですが、桜のシーズンはたくさんの人出でこのような写真は撮れないでしょうね。足元には画像のように歩くための敷石がしてあります。
「蹴上インクライン」の中腹にも復元された台車と舟が

道路のすぐ脇にあります。
蹴上インクラインを下っていってちょうど真ん中あたり、スタート地点にあったものと同様の復元された台車と舟があります。

伏見は黄桜や月桂冠、宝酒造などがある酒どころ。お酒も運んでいたんでしょうかね。
明治後期から戦後まで使われた蹴上インクラインですが、その動力はなんだと思いますか。荷物をたくさん積んだ舟を、腕っぷしに自信ありの男たちで押したわけではありません。
動力として使われたのは水力発電です。日本で事業用としては最初につくられた水力発電所である「蹴上発電所」から送電されていたようです。
そして驚くべきは蹴上発電所、なんと現役。その稼働期間は約130年。
普段は行くことができませんが、見学ツアーも無料でやっているようですので、日程を合わせてみるのもよいかもしれません。蹴上発電所も蹴上駅から徒歩圏内です。
蹴上発電所のホームページ(https://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/newenergy/water/plant/tour_keage/index.html)
トンネルをくぐればゴール

敷石が実は文字になって・・ない
蹴上インクラインは、間もなく終了。上に舟と台車があった場所から、琵琶湖疎水との合流地点までが蹴上インクラインです。

蹴上インクラインの終点琵琶湖疎水記念館前の噴水
蹴上インクラインを上から下った場合の終点がこちらの噴水です。噴水の奥に見えるのは琵琶湖疎水記念館。
物流のために拓かれた琵琶湖疎水は、実は明治に首都が東京に遷されてから人口が減少して衰退した京都の復興策として産業振興のためにつくられたもの。かなりガッツのある歴史があるのです。
そんな歴史が学べる琵琶湖疎水記念館は入場無料ですので、ちょっとした社会科見学によいかもしれません。
ちなみに定休日は月曜日とのこと。
琵琶湖疎水記念館のホームページ(https://biwakososui-museum.city.kyoto.lg.jp/)
駅に戻る際のおまけ ねじりまんぽ

ねじりまんぽ
「まんぽ」とはトンネルを意味する古い言葉。蹴上インクラインの下を通る歩行者用のトンネルです。近くに南禅寺というお寺があるのですが、そちらへと続く道になっています。

ねじれてます。
どこが「ねじり」なのかは一歩トンネルの中に入ると分かります。レンガがねじるように積み上げられていますね。
これは耐久性を上げるための構造です。ねじりまんぽの上は蹴上インクライン。重い荷物を載せた舟が通りますのでそれに耐えられるようになっているんですね。
歴史ある蹴上インクライン。京都復興を目指したガッツあふれる心意気を感じながら、お散歩してみてはいかがでしょうか。
施設ではないので営業時間などはなく、いつでも行けますよ。
今回は以上です。
ではまた!